2007-12-28

桜庭一樹/赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹
東京創元社
2006-12-28
単行本

この小説は、日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞の候補と吉川英治文学新人賞の候補にもなり、今年の『このミス』でも2位になり、まさに桜庭一樹の出世作となった作品であり、今のところ一番の代表作になった作品である。この小説のヒットで、最近では桜庭一樹はすっかり流行作家として色々なところで名前を見るようになった。図書館でも大人気で、僕が予約したのは多分半年以上前のことだ。その間に僕の中では桜庭一樹ブームは一段落してしまったんだけど、なんか勿体無いので読んでみた。

で、感想はというと、面白い。ツッコミどころはあるけど、まず地方の旧家の60年間の物語がどんどん進んでいくので、それに釣られて読む方もどんどん読んでしまう。女系家族の三代記で、3つの章ごとに主人公が変わるんだけど、それに合わせて作品の雰囲気も、最初の万葉の話はおとぎ話のように始まって、次の毛毬は漫画のような話、最後の瞳子は私小説風と変わっていくのが面白い。

悪いところを挙げると、最後に取ってつけたようにミステリー要素があるのだが、これは簡単に予想がついてしまうし、あまりいい話とも思えないので、なくてもいいような気がする。あとは、時代の風俗をなぞってみましたという感じのガジェットが浮いている。大鵬、ビートルズ、学生運動といったストレートすぎる単語は、どういう時代かを簡単に示したいのだろうけど、もうちょっと捻ってほしかったかなと思う。

そう言えば、この小説の高評価と佐藤友哉の『1000の小説とバックベアード』の三島賞を受賞したことに対しての異議申し立てを出発点として、東浩紀と桜坂洋が『キャラクターズ』という小説を書いたりしたのだが、この話はいずれまただな。

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