2008-01-08

海原育人/ドラゴンキラーあります

ドラゴンキラーあります (C・NovelsFantasia う 2-1)
海原 育人
中央公論新社
2007-07
単行本

第3回C★NOVELS大賞特別賞受賞作。C★NOVELS大賞と言えば、去年の初めころに読んだ多崎礼の煌夜祭が第2回の大賞だった。C★NOVELSってよくわからないけど、ファンタジーのレーベルなのかな。

ドラゴンキラーというとドラクエで登場する武器を思い出すが、この作品ではドラゴンを倒す者の呼称として使っている。微妙に狡いタイトルである。

化け物の肉を食って半人半妖になるというのはよくあるテーマだと思うけど、ドラゴンの肉を食って半人半竜になる話というと、紫堂恭子の王国の鍵を思い出す。主人公の兄貴分が竜人になるところはなかなかせつないのだが、この『ドラゴンキラーあります』では、そんな情感もなくドラゴンキラーはガンガン量産されているという設定。しかし、ドラゴンの肉を食ってドラゴンキラーになれるのは1万人に1人で残りは死んでしまうというから、なかなか非人道的な話である。

そして、この小説の世界観は、ドラゴンが出てくるというファンタジーものでありながら、拳銃や機関銃も出てくるという混合もの。最近こういうのが増えているらしい。主人公のココは軍隊くずれの便利屋という設定で作中にはハードボイルド的雰囲気が漂っているのだが、読んでいてあまり入り込めない。冒頭のエロ話なんかは、中学生が頑張ってエロいことを言ってみたという感じがしてしまうし、軽妙な会話もどこか浮いている。

あと気になるのは、簡単に人を殺しすぎだし、殺されすぎ。誰もが誰かを殺すような世界というなら、もっと人々の関係に緊張感があってもいいと思うけど、だらだらやって殺して殺されるという感じ。世界が成立するためには、その世界の独自のモラルというものがあると思うんだけど、それが見えなかった。物語の展開は面白かったので、その辺がちょっと残念。続編を読むのは保留かな。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ドラゴンキラーを読んでひっかかっていたことがレビューを読んですとんと胸に落ちてきました。いかにも『それっぽいこと』をいう割りに、描写が甘く、こだわりも感じられないため、キャラのセリフや行動が浮いているように思えたのです。まるで人を殺しても血の出ないゲームをしているようで。