恩田陸のデビュー作。『夜のピクニック』が面白かったので続けて読んでみた。ジャンルはホラーなのだろうか。しかし、ホラーと言っても、特に悪意のあるやつがでてきたりしないので、あんまり怖くない。3年生の春から卒業まで1年間の物語なのだが、一昼夜の物語の『夜のピクニック』とは違って、なんか悪い意味で卒業アルバム的なゆるさを感じる。ホラー仕立てのせいでヒロインの沙世子がよくわからないキャラになっているのもよくない。
しかし、学園祭の学校生徒全員が一言ずつ台詞を言う作中劇『六番目の小夜子』は凄かった。真っ暗闇の講堂の中で違う声が一言ずつ台詞を読み上げるのは、想像すると異様な光景だ。余計なお世話だが、このシーンをクライマックスにして、物語を学園祭の前後にぎゅっと凝縮した方が良かったのではないだろうか。
そして、当たり前の学校生活をノスタルジックに問い直すというテーマはこのデビュー作から見られる。作者はよっぽど楽しい高校生活を送ったんだろうなあ。最近思うのは、充実した学生生活を送ったり、友人が多い人間の方が楽しめる作品が増えてきたなということ。この作品は昔のものだが、『夜のピクニック』は最近流行ったわけだし。リアルで負け組だとフィクションでも負け組なんですねー。ああ、これ以上負けたくねーなー。
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