2007-07-17

道尾秀介/シャドウ

シャドウ
道尾 秀介
東京創元社
2006-09-30
単行本

これはまたこってりとした本格ミステリーだな。最初は少しホラーの入った家族小説かと思ったのだが、ミスディレクションや叙述トリックが大量投入されていて、犯人当てのようなところもある。極めつけは、最後の意外すぎるオチ。これぞ本格って感じの清々しいトリックだった。

しかし、家族小説として読んだ人はかなり肩透かしを食らったのではないだろうか。中盤までの話の焦点は、最も信頼する父親が精神を病んでいて最悪の犯罪を犯したかもしれないと分かったとき子供はどうするのか、というものなのだが、最後のオチで見事にスカされる。これは、前にレビューした伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』と同じだね。オチは驚くけど、果してそれまで読んできた読者の期待に応えているのかという問題が残る。

まあ、どう読むかだね。表面上はともかく中身は完全に本格ミステリーだから、そう読めばかなり面白い。天童荒太のような小説だと思うと多分がっかりする。しかし、話の展開に引き付けられて一気に読んだので、面白い小説なのは間違いない。

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