桜庭一樹ですよ。ライトノベル出身なのだが、一般小説誌にも寄稿し、広い読者層を持っている、今、最も注目されている作家の一人だ。『赤朽葉家の伝説』で今年の日本推理作家協会賞も受賞した。今の読書生活でも避けては通れない作家だよなあ、と思いつつも、どうも桜庭一樹の作品って、女性が少女についてこってり書いている印象があって、男の自分は作品世界にちゃんと入れるのだろうかと思ってちょっと敬遠していたのだが、『GOSICK』ならラノベだし入門にもいいだろうと読んでみることにした。
で、『GOSICK』だが、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時代で、「ソヴュール」というヨーロッパの架空の国が舞台。これ、架空にする意味あるのかな。特にこの話では第一次世界大戦の話があるので、そこで違和感がある。別に実在の国にしてもよかったんじゃないかな。米澤穂信の『さよなら妖精』も最初のラノベのときの予定ではユーゴスラビアではなく架空の国にする予定だったらしいが、それではあの面白さは出なかっただろう。まあ、しかし、これは余計なお世話か。
それで内容はというと、密室、豪華客船(幽霊船)、死体偽装と、サービス精神旺盛にミステリーのガジェットがふんだんにぶちこまれている。しかし、犯人当てはちょっと単純かな。普通に消去法でいけるから。モノローグでの主語の語り落としがわざとらしすぎる。しかし、その犯人のモノローグも結構面白い。突然、1 の国籍を持つ子供達が集められて無人の船内でバトロワさせられるのだが、その目的は、これから起きるある出来事を占うためのものだったというもの。今回、主人公の一弥とヴィクトリカが巻き込まれるのは、当時の子供達の一人の復讐劇というわけだ。
全体の感想は、ちゃんとラノベ&エンターテイメントしてるなあという感じ。米澤穂信あたりと比べると、米澤穂信の場合はデビュー作の『氷菓』ですでにスタイルが確立していることに驚いたのだが、この『GOSICK』はレベルが高いなと思いつつも、独特の味があるという感じではない。器用に書いているなあという印象。とりあえず継続してシリーズを読んでみる。
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