2007-08-01

有川浩/図書館内乱

図書館内乱
有川 浩
メディアワークス
2006-09-11
単行本

前作『図書館戦争』と一緒に続編の『図書館内乱』と『図書館危機』も予約していたのだが、ようやく借りられたので読んでみた。

前作についても文句ばかり言ったような気がするが、これもいまいちかな。本の規制と検閲をめぐって法務省と地方の図書館が戦争をしているという無茶な設定が話の足をひっぱっているように見える。今回は火器も出てこないしね。

前作のあとがきで作者が月9ドラマと言っていたように、一つの章がドラマの一話のような形の連作短編になっている。ストーリーもこの巻の中では全然完結していない。まあ、それはいいんだけど、前作もそうだったが、テーマが散漫な感じではある。障害者に対する過剰な規制や、未成年犯罪の実名報道など、作者が興味のあるところをつまみ食いしたような構成になっている。この辺もテレビドラマ的なのかもしれない。

今回もメディア良化委員会が図書館員を人権侵害の容疑で逮捕拘束するなど、微妙にツッコミどころがある。さすがに有り得ないよね。警察でもない組織が言い掛かりで強制拘束できるって、もう何でもありってことでしょ。そんなの戦時下でもない限り日本の社会が許すとは思えない。テーマはかなり現実的なものを選んでいるだけに、設定のリアリティももうちょっと気をつかってほしいところ。

それで、この巻の後半はタイトルの通り、図書館を文部省管轄にして法務省のメディア良化委員会に対抗すべきだという新勢力が現われて、あくまで図書館の独立に拘る主人公側と対立するのだが、そもそも図書館の独立性というものにあまり関心がないというか、このテーマは図書館のことを真剣に考えている人間じゃないとちゃんと楽しめないかもな。正直に言うとどっちでもいいじゃんというか。まあ、マイナーなテーマって難しいよね。

なんかネガティブなことばかり書いてしまったな。まあ、何と言うか、中途半端な戦争設定、つまみ食い的なテーマ、テレビドラマ的な構成、そういったのは好みではないんだけど、ライトノベルやケータイ小説とはまた違った、今風な小説の形というのが、なんとなく感じ取れるかもしれないと思った。まんが的リアリズムでもなく、ゲーム的リアリズムでもなく、テレビドラマ的リアリズムというか。過渡期という感じではあるけどね。ケータイ小説ほどアホっぽくもなく、文芸というほど堅苦しくもなく、ライトノベルほど子供向けでもなく。しばらくはこういう小説が流行るかもね。

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