2007-08-10

桜庭一樹/GOSICK VI

GOSICK〈6〉ゴシック・仮面舞踏会の夜
桜庭 一樹
富士見書房
2006-12
文庫

GOSICK Vの続き。無事ヴィクトリカを救出した一弥は、ヴィクトリカと共に豪華列車オールド・マスカレード号に乗って学園への帰路につく。そしてそこで起きた奇怪な殺人事件に巻き込まれていくというストーリー。

ここに来ていきなりフーダニットな推理小説的展開。たまたま同室に乗り合わせた面々が変な自己紹介していくのが面白い。最初に<孤児>と呼ばれる娘があからさまな嘘の自己紹介をしたために、他の人たちも面白がって突拍子もない自己紹介をしていくことになるのだが、後にそれが全くの嘘というわけでもないことが明らかになる。

事件は80ページくらいで終わり、その後は彼らが一人称で事件について証言していくという展開。そこでは事件に関係ない人物も他人に言えないような重大な秘密を抱えていたことが判明する。第一次世界大戦のときに息子を亡くしてから半狂人になってしまった舞台女優、エネルギーの変化に対応できずに破産においこまれて身代わり殺人を行なった炭鉱王と、脇役たちの話も興味深い。

しかし、もっとややこしくミスリードを駆使した展開になると思ったら、読んでいても犯人はすぐわかるし、ヴィクトリカもすぐに言い当ててしまう。そこがちょっと残念。全然関係ない話をしていくなら、話を聞いていくうちに、元の事件がどうでもよくなるくらい変な話になっていくとか、もしくは結局全員事件には関係なくて、もっと謎な事件になっていくとか(まあ、これらもベタだけど)、その手の裏切りがほしかったような気はする。

あと、前回、今回と話の焦点になっている形見箱だが、本物かどうかというのは証明できないのではないだろうか。コルデリアがやったように日記や肖像画程度ならいくらでも捏造できるわけだし。それとも本物はもっと面白いものが入っているのだろうか。まあ、ジュピター・ロジェなんてどうでもいい人物だから本物の中身が明らかになったりはしないんだろうなあ。

そして、この巻を読んで思ったのは、いかにも小説っぽいなというか、小説で物語を語るというところに主眼が置かれたのかなと思った。一人一人証言をしていくところとか、形見箱の中身からジュピター・ロジェの人生を想像していくところとか、小説的な想像力が随所に発揮されているなと感じた。こういうところが、一般小説でも評価を受けている作者の力量の片鱗なんだろうな。

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