第2回本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞受賞作品。
『容疑者Xの献身』に続く、メジャーな小説を読んでみよう第二弾。有名作品なので、あまり内容を紹介しても仕方がないのだが、全編、一昼夜かけて80kmを踏破するという「歩行祭」だけの話。当日の朝に始まり、翌日のゴールで終わる。
大枠が単純なだけに、作者の構成、描写、人物造形などテクニックを駆使して書かれているのが分かる。先が読める展開だが、そういう中でじっくり描写を読んでいくのも好きなので(そうじゃなきゃ樋口有介をあんなにたくさん読んだりしない)、この小説もかなり楽しむことができた。
ただ、ノスタルジーが少しくどいような気がしないでもない。世の中には、男子校で暗くじめじめした3年間を送った人もいるわけですよ、俺とか。気持ちは分からなくはないけど、あんまりやりすぎると、大人が振り返って美化して書いてるなーという感じで、やや醒めてしまうかな。まあ、この辺は好みの問題か。
あと、人物の作り方が女性作家っぽいなという気がした。カッコいい男の子2人のコンビに、女の子の仲良し3人組、クラスを盛り上げるお調子者、そして、嫌な性格の女の子。女子から見たクラスってこんな感じなんだろうな。男性作家だと、まず、嫌な性格の女子は出てこないよね。嫌な性格の男子も出てこないか。やっぱりコミュニティを脅かす存在、排除すべき存在というのは、女性にとってはリアリティのある問題なんだろうね。
こういう普通の学校生活の一行事で一つの物語を語れてしまうというのは、小説というメディアならではなのではないかと思う。というわけで、僕は、結構気に入った。あんな青春ないけどね。
0 件のコメント:
コメントを投稿