2007-09-18

らきすた 最終回

他のアニメより一足早く、らきすたは最終回だった。まあ、あのとおりのアニメなので、OP再現のチアダンスあったくらいで、最終回だからって特別なことはないのだが。

全話終わったということで、このアニメ全体の感想なのだが、その前に、このアニメに関するネット上の議論について触れておきたいと思う。らきすたは、DVDがバカ売れしてニコニコ動画を筆頭に各所で話題になっているのにもかかわらず、賛否両論、毀誉褒貶が激しく、少し前にブロガー達の間で、どこが面白いのかわからないというエントリーが流行したことがあったくらいだ。そこで、らきすたの面白さについて、一応、自分なりの見解を述べておこうと思う。

少し遡って、ハルヒのEDが流行ったとき、正直言って、なぜこれがこんなに流行るのか、理解できなかった。ハレ晴レユカイはハピマテやネコミミモードみたいなキャッチーな曲じゃないし、アニソンでオリコン上位を目指すというのも、そろそろ飽きてきたころだ。作画が良いと言っても、おそらく実際のダンスをアニメに起こしたものだろう(ロトスコープって言うの?)。手間はかかるのはわかるが、写真をトレースした絵のようなもので、クリエイティブな感じはしない(これは学園祭シーンにも言える)。カメラワークだってずっと正面だけだ。これはらきすたのOPと比べるとよくわかる。あれは一目見ただけで凄いとわかるのだが、ハルヒEDには(意図された?)チープさのようなものがある。

と、当時は思ったのだが、今から振り返ると、納得できる理由も見えてくる。やはり一番大きな背景は、YouTubeを始めとする動画系サイトの盛り上がりだ。記憶を遡ると、YouTubeの日本での盛り上がりは、ハルヒの放送の少し前だったと思う。日本では、深夜アニメやU局アニメがアップされて、時間の合わない人や放送されてない地域の人が見るというのが主な使い方だったが、MADや自分で撮影した映像をアップする人も出始めていた。

ハルヒEDの妙なリアリティはこういう背景に支えられている。ハルヒED自体がハイクオリティでありながら、いかにも素人が作った創作ダンスの動画のように見えるし、実際ハルヒEDを踊った動画が何本もYouTubeにアップされたりした。世間で言われていることの繰り返しになるが、ハルヒの流行にはネットの存在が大きい。しかし、ここで言っているのは、ネットを媒介にして流行ったというよりは、今だとニコニコ動画の存在でわかりやすいが、ネットが作り出すある種のリアリティをうまく京アニ(というか山本寛)が掴んでいるということなのだ。

リアリティという言葉を何度か使ったが、らきすたの面白さを説明すると、まさにこのリアリティの問題ということになる。有名な1話冒頭いきなりチョココロネの話を始めるのは、(原作通りというのもあるが)一つのリアリティを定義していると考えることができる。つまり、退屈極まりない雑談だが、それが日常でしょ、ということである。しかし、それは巧妙に作り変えられた日常でもある。オタクは少女になり、かわいい友人たちもいる。理解のある先生、親、親戚。らっきーちゃんねるというのは現実とアニメの世界の橋渡しをする役割もある。ハルヒ2期決定に喜ぶこなたなんていうのは象徴的だ。つまり、らきすたに対してリアリティを感じるか、もしくは、らきすたの中のリアリティに憧憬を感じない人間には、ちっとも面白くないようにできているのだ。2chでアニメを実況し、ニコニコ動画にMADを上げたり、ブログでアニメを1話ごとに感想を書くような人間が楽しむようにできているのだ。

簡単に言ったが、しかし、これは凄いことだ。僕は、昔、押井監督の『攻殻機動隊』や『serial experiments lain』を見て、その映像の凄さに驚嘆しつつも、ある種の苛立ちも感じていた。当時、2chや、もちろんYouTubeもなかったが、パソコン通信があり、ネットニュースがあり、メーリングリストやWebチャットが流行ったりしていた時代だ。当時大学生だった僕の生活には、それらのネットと、サークル活動や課題レポートなど普通の学校生活が同列に存在していた。そういう人間からすると、攻殻やlainみたいにネットが解脱の対象であったり、ホラーの対象になっているというのは、いかにも世間のネットに対するイメージに迎合しているという感じで、納得がいかなかったのだ。結局、ネットのリアリティがアニメの世界に反映されるのは、攻殻SACまで待たなければならなかった。

ということで、2ch、YouTube、ニコニコ動画の盛り上がりをリアルタイムに作品のリアリティとして取り入れられるのは、やっぱり凄い感性だと言わざるをえない。恐るべし山本寛である。結局、京アニから離れてしまったということで心配ではあるのだが。

と、色々、らきすたの面白さについて語ってきたが、では、らきすたが面白かったか、というとこれはまた微妙な話ではある。特に後期、本編は狙った日常の退屈さから、本当の惰性になり、そして全く空気の読めていない白石実写ED。やっぱり、クラナドとハルヒ2期までのやっつけアニメという感じが出てきてしまったなと思う。まあ、色々考えることがあっただけ、楽しめたと言えば楽しめたのだが。

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