2007-02-08

多崎礼/煌夜祭

Amazonから届いたので読んでみた。新人離れした構成力との評判だったので、楽しみにしていたのだが、その評判に違わない素晴らしい構成だった。

単に伏線の張り方とその回収がうまいだけでなく、基本的に、民話、伝承のフォーマットを借りた連作小説なのだが、二人の語り部が交互に語るという仕組みがうまく機能していて、話に対して語り部が別の解釈を与えたり、前の話の結末を次の話で否定したりと、構成のテクニックが随所に見られる。多重にミスリードを繰り返していて、ミステリー的楽しみ方もできるかも。途中、田中芳樹ばりの戦記ものの部分もあり、エンターテインメントの要素もある。

欠点を挙げると、テーマがちょっとベタすぎるね。ベタすぎて軽くなっちゃっている。読み終わると構成のうまさばかりが目立って、話が心に残らない。ちょっと厳しいけどね。それと、こちらの方がより気になるが、語り部が語るというわりに、文体が素直過ぎるんだよね。もうちょっと雰囲気が出るとよかったかも。語り部の描写もイガ粉(?)を投げるだけで物足りない。

総合すると、下半期ベスト10にランクインというのも頷ける出来だった。けど、文体的にもう一工夫欲しいところだね。次作も迷いなく読むかというと微妙なところ。

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