2007-02-12

伊坂幸太郎/アヒルと鴨のコインロッカー

読む本がなくなったというわけではないのだが、米澤穂信にハマってミステリーを読みたくなったので、今、大人気の作家、伊坂幸太郎を読んでみた。

この「アヒルと鴨のコインロッカー」は、米澤穂信の「さよなら妖精」と同じ、東京創元社ミステリ・フロンティアのシリーズで、第25回吉川英治文学新人賞受賞作、2005年このミス2位、今年映画化も予定されているという、超話題作だ。

いやあ、今まで、あんまりこういうの読んだことないんだよね。伊坂幸太郎は1971年生まれという若さで、すでに4作も直木賞候補に選ばれているらしいが、そもそも直木賞受賞作って、全然読んだことないな。ざっとWikipediaの直木賞を見てみたが、一作も読んだことがないのが判明した。まあ、だから何なのだ、という感じではあるんだけど。

それで、この作品の感想だが、面白いは面白いのだが、違和感を感じるところもある。

まず、村上春樹のパン屋襲撃と比較されることが多いように、この作品の魅力として、書店を襲撃して広辞苑を盗むというような不条理さとユーモアがあるのだが、それらが最終的にミステリー的に解き明かされてしまう。それは基本的に面白いんだけど、味気ないところもあって、特に作中最大のトリックである河崎の正体は、驚いた反面、別に河崎のままでも良かったんじゃないかという気もするんだよね。難しいところだけど。

それと、悪役や嫌味な奴がどうも通俗的過ぎるような気がする。ペット殺しを趣味にする若者グループって、また、ワイドショー的な。あと、国籍差別の話もよく出てきて、これがまた紋切り型に留まっていると思う。なんとなく、作風や文体と、そういう通俗性が不釣り合いな気がするんだよね。

あと、結末で最後3人とも死んじゃうんだけど、果して死ぬ必要があるのかな、と思った。皆死ぬことで寓話的になりすぎるんじゃないかと。読み終わってもいまいちピンとこない感じ。

と、悪く書いたけど、基本的には面白い。もうちょっと他の作品も読んでみようかなとは思った。あと、映画化されるらしいけど、この最大のトリックは、どう映像化するのだろうか。気になる。

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