2007-06-04

樋口有介/風少女

風少女
樋口 有介

東京創元社

2007-03

文庫

この作品は、樋口有介の『ぼくとぼくらの夏』に続く2作目で、第103回直木賞候補にもなったらしい。

樋口作品の中でも評価の高い方だと思っていたので、楽しみにして読んだのだが、他の樋口作品を読んでしまっているので、大筋では、まあ、いつも通りの話だなあ、と。他の樋口作品と比べて、特徴的なのは、作者の故郷という前橋市の描写があること、そして、地方都市で鬱屈している若者たちの描写。この辺は、僕も高校まで仙台にいたので、ちょっと分かる。

全体的には、元純文学オタクだった作者の残り香のようなものを感じる。そう考えると、比較的最近の作品は、ちょっとエンターテイメント側で落ち着いちゃっているかなという気はする。『ぼくと、ぼくらの夏』もそうだったけど、ジャンルがちょっとブレている方が面白いかもしれない。

まあ、けど、正直どれも大差ないよなあ。樋口作品のパターンとしては、『ぼくと、ぼくらの夏』と、この『風少女』で全部網羅されているのではないだろうか。あと、この2作品には、ちょっとした構造があるよね。親子と兄弟で繰り返される恋愛の構造みたいなのが面白い。樋口有介を読むなら、この2作品で十分という気はする。

0 件のコメント: