2007-08-23

キリンチャレンジカップ 日本×カメルーン & 五輪最終予選 U-22日本×ベトナム

結果は、A代表が2-0で日本の勝ち。得点者は闘莉王と山瀬。U-22は1-0で日本の勝ち。得点者は青山。

なんとA代表とU-22の試合が同日開催である。狭苦しい日程の中で仕方がないところもあるが、オシム監督も選手起用がU-22優先になってしまうことに苦言を呈していた。試合はまず18:30からA代表のカメルーン戦、続いて20:30からU-22のベトナム戦となっている。テレビ朝日は2試合連続中継だったらしい。僕は1試合目をテレ朝で、2試合目をBSで見た。テレ朝は久し振りだったが親善試合ということもあってか、めちゃくちゃ酷いというわけでもなかった。しかし、たまには松木安太郎以外の解説者を起用しようとは思わないのだろうか。それとも一般視聴者にはかなり支持されていたりするのだろうか。彼のやや偏向のある解説は脳内で補正しなきゃいけなくて疲れるんだよね。

さて、まずは、A代表。今回はアジアカップメンバーに加えて、山瀬功治、大久保嘉人、高松大樹、前田遼一、田中達也の5人が選出され、反対にアジアカップメンバーからジェフ千葉の選手(巻、羽生、山岸、水野)が姿を消した。新しく加わった5人は、Jリーグでも好調で結果も残しており(高松は怪我の離脱が長かったのとチーム状況の悪さはあるが)、恐らくファンもマスコミも納得の5人ではないだろうか。

個人的には田中達也に期待していた。アジアカップで足りなかったドリブルで仕掛けてからのシュートという面では、日本でも抜きん出る存在だ。浦和での直前の試合でも2ゴールを決めており、この試合でも日本の個人技が世界でどのくらいやれるのか良い試金石になるのではないかと考えていた。

千葉の面々はまだオシムの構想から外れたわけではないだろう。巻、羽生は怪我があるし、水野はU-22優先だ。とは言っても、やはり代表はアジアカップを経て第二段階に入りつつあるのだろう。特にこの日先発した前田、大久保、田中の3トップはオシムも今まで使いたかったけど、アジアカップの連携のことを考えて我慢していたのではないだろうか。

フォーメーションは、中澤と闘莉王が並ぶ順当な4バックに啓太、阿部のボランチ、遠藤がトップ下、FWは前述のとおり、前田を頂点とした大久保、田中の3トップ。俊輔、遠藤、憲剛とパサーが揃ったアジアカップとは異なり、啓太、阿部でしっかりと守り、ゲームをコントロールするのは遠藤の役割になった。

前半は、カメルーンの状態が悪かったこともあるが、この布陣がよく機能した。3トップが前線からボールを追い回し、中盤でのプレスがしっかりと効き、日本がペースを握った。カメルーンは疲れているのだろうが、あまり動かず、日本の選手がパスを貰ったところを奪ってカウンターを狙うという、ちょっとセコい戦術。

先制点は、日本。遠藤のFKから闘莉王が頭で合わせた。これはFKもヘディングも絶妙だった。カメルーンはこの時点ではあまり慌てず、1-0で前半は終了。

しかし、後半は良くなかった。相手に合わせて阿部が下がって3バックになり、日本の選手がバテてくると、中盤でのプレスが全くかからなくなり、カメルーンが攻勢に出る。日本は次々に選手を交代していくが、全然機能しない。バテてきた遠藤が交代されると、日本はボールを全く繋げなくなり、守っては大きく蹴り出す展開ばかりで、ゲームは完全にカメルーンに支配された。しかし、闘莉王、中澤、阿部のDF陣は厚く、最後の最後では守り切ることができた。このまま試合終了かと思われた後半44分、CKのこぼれ球を山瀬が豪快なミドルでゴールに突き刺し2-0となった。どうやら、これが日本の後半唯一のシュートだったらしい。試合はこのまま終了。

2-0で勝ったとは言っても素直には喜べない試合だった。オシムが選手を交代する度に流れが悪くなるのは相変わらずで、新しい選手との連携はまだまだ深めていく必要があるだろう。交代選手では、点を決めたが他には目立つところがなかった山瀬、遠藤の代わりに入った中村憲剛の出来が気になった。カメルーンが押していた状況というのもあったが、日本が慌てていた流れを落ち着かせられなかったのは痛い。憲剛は、ボランチのスタメンを阿部に取られた形になったが、この試合の出来では取り返すのは難しい。

反対に良かったのは、守備面。中澤、闘莉王、啓太、阿部の4人に加えて、加地の調子も良かった。前半は、この5人でしっかり守ってゲーム優勢に進めることができていた。日本代表は、トルシエ時代もジーコ時代も、脆くて1対1になるとすぐ崩れるような神経質な守備しかできていなかったが、オシムになってからは守備がぐっと安定するようになった。これは、ジーコ時代にはいなかった闘莉王、啓太、阿部のクオリティの高さもあるが、やっぱりJリーグが段々と成熟してきたというのが大きいのではないだろうか。オシムはJリーグの良さをそのまま代表に直結できる監督なので、Jリーグの質の向上が代表の安定に繋えがるようになったと思う。まあ、浦和の選手+中澤なんだけどね。

期待の3トップも悪くなかった。特に田中達也は自然と前を向いてボールを持つ技術が高く、何度もカメルーンDF相手に勝負を仕掛けていった。前田のポストプレーの効いていたし、大久保もペナルティエリアの中でチャンスを作っていた。即興でもうまく連携できるのはアテネ代表で一緒だったからだろうか。

次にU-22。これはコメントするのが難しい。運動量も悪くないし、圧倒的にゲームを支配して危なげなく勝ったと言えばそうなのだが、スコアは1-0、平山が再三チャンスを外すなど後味は悪い。そろそろマスコミ、ファンは反町監督解任の声も上げている。僕も正直解任しちゃってもいいと思う。日本には反町監督よりも良い指導者がたくさんいると思いたい。

とは言うものの、反町監督の選手起用、試合毎の戦術はある程度合理的なものではある。この日はいつものU-22のメンバーから伊野波が怪我で外れ、代わりに細貝、そして家長の代わりにU-20代表だった柏木を起用した。これには驚いた。U-22での家長の出来が悪いとは思えないので、柏木をスタメンとサブの実力が離れがちなU-22の前線のバックアッパーにしたいのだろう。ベトナムが相手なので少々の無茶はできるという計算だ。

試合は、まあ、圧倒的な実力差があるということで終始日本ペース。後半の最後の方で少し攻められたくらいだ。しかし、得点はCKからの青山だけ。攻撃は水野の右サイド偏重で、外したもののチャンスは多かった平山はともかく、セカンドトップの李と岡崎は共に機能しない。

なぜ、このようなことになってしまったのか。理由は簡単で、柏木がフィットしなかったからだ。昔のブログでも書いたが、このチームはFWと中盤、サイドの距離感が悪く連携に問題があった。それを2トップにトップ下家長という布陣でようやく克服したところなのだ。家長は前線で動き回ってボールを触り、本田や水野と連携してサイドの攻撃を引き出すのがうまい。また、楔のパスを受けられるし、隙あれば自力で突破することもできる。それに比べると、前半の柏木は裏へ抜けようとするばかりで、このチームの問題点を再び露呈させただけだ。サイドに攻撃力のある選手を置いているのだから、裏へ抜ける動きというのはそれほど求められていなかったのだ。

もちろん、戦術的な問題なので、柏木一人が悪いわけじゃないし、後半に入って修正してくると、途端に素晴らしいプレーを見せたのは流石だ。でも、交代で入った家長の方がまだフィットしてたかな。しかし、間違いなく能力の高さ、特徴は見せた。運動量、守備、キックの精度、アイデアは家長にはないもので、それらの要素はモダンサッカーにはより必要とされるものだ。連携を高めれば、このポジションで家長を越すのも十分可能だ。勝ち点3を無事取れたのだから、柏木のテストをここでできたのは、大きな収穫と言ってもよいだろう。

しかし、選手一人を変えただけで、ここまで元に戻ってしまうということは、このチームがいかに個人の能力に頼ったチームだったかということだ。水野、平山、梶山あたりを変えても同じように機能しなくなるだろう。反町監督をある程度合理的としつつも解任を支持するのはこうした理由だ。結局のところ、場当たり的で選手をパズルのように組み合わせるだけで、チームの戦術を確立できていない。選手が少し入れ替わると全く機能しなくなってしまう。アクシデントがつきもので、即興でチームを作らなければいけないこともある代表ではこういうデリケートな状況は良くない。これから最終予選は何度が連戦になるところがあるので、そこでこの弱点が再び露呈しないと良いのだが。

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