2007-05-05

樋口有介/彼女はたぶん魔法を使う

彼女はたぶん魔法を使う
樋口 有介

東京創元社

2006-07-22

文庫

「ぼくと、ぼくらの夏」が面白かったので、最近創元推理文庫で復刊した樋口有介の私立探偵柚木草平シリーズも読んでみることにした。

このシリーズでは、主人公の柚木草平は、嫁と娘がいるのだが別居中で、美人の不倫相手がいて、さらに依頼人も美女、被害者も美女、協力者も美女という独特の美女尽くし樋口時空が展開される。他の人の感想を見ると、このご都合主義的な展開は、好き嫌いが分かれるようだ。もちろん、ラノベ時空に慣れ親しんでいる俺は全然平気だけどね。つーか、Welcome。

しかし、シリーズものにしては、危うい設定だよな。わざわざ嫁と別居していて、不倫相手にも旦那がいるって設定にしなくても。その辺が、80年代的自由さを感じるね。

内容は、面白いんだけど、「ぼくと、ぼくらの夏」の方が良かったなあ。高校生ならマセガキで済んだけど、38歳のおっさんが主人公だとセクハラ小説になっちゃうよなあ。あと、面白かったのは、柚木草平の推理が外れるんだよね。依頼者の島村香絵に対して、本当は犯人を知っていて保険金目当てで依頼しただろ、と詰め寄るのだが、間違いだったんだよね。この辺がちょっとせつなくて良い。

それと、上に挙げたとおり沢山の女性が登場する本作だが、なんでもラノベとして読むぼくとしては、一番の萌えキャラは嫁の知子だね。草平を憎からず思っているのに、電話ではぐちぐちと文句を言ってしまうというツンデレキャラ。毎回、草平になだめすかされて、今度娘と三人で食事でもしようとか言われて大人しくなるのだが、結局草平に約束をすっぽかされて怒り狂うというワンパターンが良い。でも、こんなこと書いちゃうと、昔からの樋口有介ファンにめちゃくちゃ怒られそうだ。

とは言っても、ミステリーとしてもちゃんと面白い。意外とフットワークの軽い柚木草平が、事件に関係する人物を虱潰しに当たり、人間関係を解き明かすことで事件を解決するのは、本格とはまた違った魅力がある。俗に言う「普通に面白い」ってやつだな。

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