2007-05-22

樋口有介/刺青白書

刺青(タトゥー)白書
樋口 有介

東京創元社

2007-02-21

文庫

柚木草平シリーズ5作目にして、柚木草平が主人公じゃないという番外編。そして樋口有介の作品としては珍しい3人称の作品でもある。本作の主人公は三浦鈴女(すずめ) という女子大生。親が美空ひばりにちなんで付けた名前らしい。柚木草平も第二の主人公として出てくる。つまり、青春小説と中年ハードボイルドという樋口有介の2大看板を合体させたような小説で、今回は事件もなんと4件も発生し、容疑者も常時3〜4人くらいいる状態で、なかなか椀飯振舞な内容である。

トリックは、今回も他の樋口有介の作品と同じく、昔因縁のあった人物関係を解き明かしていくというもので、本格もののように読者が推理できるものではないが、いくつか面白い仕掛けもあり、ミステリーとしても楽しめる。

しかし、作者はあとがきで柚木草平について「あんたちょっと、恰好よすぎないかね」と言っているが、柚木草平はよりセクハラ化がすすんでいるようにしか見えない。きっと作者がカッコよく書こうと思えば思うほど、柚木草平はセクハラオヤジ化してしまうのだろう。柚木草平は冴えないけど、実はちょっとモテるくらいがちょうどいいと思うのだが。毎度少年キャラはカッコいいんだけどね。

さて、あとは、風少女を読めば、創元の第1回配本は全消化になる。正直どれも同じような話というのは否めないが、不思議とどれを読んでも面白い。これはきっとファンになってしまったということなんだろうな。

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