2007-05-09

樋口有介/初恋よ、さよならのキスをしよう

初恋よ、さよならのキスをしよう
樋口 有介

東京創元社

2006-09-20

文庫

「彼女はたぶん魔法を使う」に続く柚木草平シリーズ2作目。読む方が恥かしくなるようなタイトルだが、中身は、前作よりずっと重いものになっている。

娘と訪れたスキー場で、柚木草平は、高校時代の初恋の女性・卯月実香子と再会するのだが、一ヶ月後、実香子は何者かに殺されてしまう。実香子の早川佳衣に依頼されて柚木草平は捜査を始めるのだが、容疑者が早々に草平と実香子の同級生の4人に絞られる。草平は、その4人を順番に当たっていくのだが、どの人物も厄介な過去の持ち主で、話を聞く度に印象は二転三転する。しかし、草平にも実は重い過去があって……という感じで、内省的な展開が続く。今回のヒロイン早川佳衣も、前回の夏原祐子に比べると出番はかなり少ない。まあ、最後はチョコを貰ってデレが入るんだけど。

感想は、今回はちょっとウェットになりすぎかなという気はする。この辺も主人公が38歳という年齢がちょっと邪魔しているというか。子供なら、大人の事情など知ったことじゃないと突き放せるんだけど、草平はつい同情しちゃうんだよね。結果的に、火曜サスペンス劇場的なオチになってしまっている。ハードボイルドは突き放してなんぼだろと、あんまりハードボイルド読んでないけど言ってみる。

まあ、しかし、これはこれで面白い作品。今回草平が対面するのが20年ぶりに会った友人たちだけに、人間関係を解き明かしていくという、このシリーズの醍醐味も他の作品より強く味わえる。それにしても、このタイトルはどうにかならなかったのか……。

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