2007-01-09

米澤穂信/氷菓

米澤穂信の氷菓を読んだ。この作品で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」を受賞し、米澤穂信はデビューしている。しかし、ラノベにしては地味なタイトルだね。しかも、この小説は60年代の学生運動をモチーフにしている。よくこんな題名と内容の組み合わせで賞を獲れたものだと感心する。

話は特に劇的な葛藤があったりするわけではなく、非常に淡々と進む。「春期限定いちごタルト事件」に似ているね。いや逆だけど。それでも、しっかりとした文体と練ったプロットで退屈せずに読める。というか、退屈さと面白さのギリギリのところを狙っているのかもね。

デビュー作にはその作家の全てが集約されるとよく言われるけど、この氷菓にもその後の小説で見られる自意識過剰気味の丁寧さが随所に見られる。特にこの作品では、ミステリーに対する強いこだわりを感じる。一見すると、設定や舞台を工夫して定型のミステリーから逃れようとしているように見えるが、ここまでくると逆にミステリーにしない方が自然だと思われるのに、あえて、ミステリーとして成立させようと努力しているように見える。自然と不自然の境界を探っているような感じ。そういう試みがデビュー作にして早くも独特の作風を生み出す要因になっているような気がする。

しかし、オチが脱力。榊原郁恵の「夏のお嬢さん」じゃねーか。古いか。それとも作者のあとがきによると、4割が実話らしいので「氷菓」の部分が実話なのだろうか。

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