S&Rシリーズの第一作「犬はどこだ」を読んだ。シリーズと言っても、まだこの1作しか出ていない。この作品は2005年の「このミステリーがすごい!」で第8位にランクインしていて、米澤穂信の代表作になるらしい。さらに、伏線回収が秀逸、意外なラストという評判でかなり期待して読んだ。
で、感想は、と言うと、やっぱり面白かった。確かに見事なミステリーで、後半はページを繰る時間ももどかしいという感じだった。展開は意外というわけではなく、まあ、そういう展開もあるかな、とは予想できた。しかし、伏線回収が(これも言われているとおり)見事で、ミステリー小説として考えると米澤穂信の小説では一番かなと思う。
そして、オチはそうくるかーと感じだね。米澤穂信らしいな、と。米澤穂信がハードボイルド探偵小説を書けば、こうなるんだろうなって感じ。前に文体がハードボイルドだと指摘したけど、この作品を読んで米澤穂信の他の小説を振り返ると、意外と米澤穂信の探偵役は、いわゆるハードボイルド探偵と見ることもできるのかなと思った。世間と自分との距離のとりかたがそれっぽい。
しかし、個人的にはちょっと物足りなかったところもある。
説明が難しいのだが、「愚者のエンドロール」と「クドリャフカの順番」に比べると「氷菓」が物足りなかったり、「夏期限定トロピカルパフェ事件」に比べると「春期限定いちごタルト事件」がちょっと寂しいのと同じだ。「犬はどこだ」は、ややミステリーに徹しすぎているような気がする。主人公の紺屋長一郎の話として見れば、始動したばかりという感じで、次作以降の展開に期待って感じだな。どうも、この作者はシリーズ第1作目では登場人物は大人しくしてるのが好みなのかも。単純にスロースターターなのかもしれない。
さて、これで米澤穂信の既刊の作品は全て読んだのだが、総括すると、この作者は本当にハズレがないね。出てる本、全部面白い。再三、抑制が効いていると形容したけど、それが読んでいて癖になるところ。どうも本を読むと一々ツッコミを入れてしまう性分なので、それがわざわいして、特定の本を読むと非常にストレスが溜まったりするのだが、米澤穂信の本は全くストレスなく読めるのが素晴らしい。
米澤穂信を初めて読むなら「さよなら妖精」をおすすめしたい。この一作に米澤穂信の小説の醍醐味が集約されていると思う。反対に、上で挙げている「氷菓」「春期限定いちごタルト事件」あたりは、人によっては退屈だと感じるかもしれないので、注意が必要かも。それぞれ続編はエキサイティングなので続けて読むべし。
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