2007-01-18

米澤穂信/ボトルネック

米澤穂信のボトルネックを読んだ。これは古典部シリーズや小市民シリーズとは別の独立した話で、今のところ米澤穂信の最新作ということになる。それにこの作者にしては珍しく、ちょっとファンタジー要素が入っている。

内容は、非常に残酷な話だ。両親は険悪で、兄が死んでも誰も悲しまないほど家庭環境は荒んでいて、唯一心を許した恋人ノゾミにも死なれたという可哀想な少年リョウが主人公。そのリョウがある日パラレルワールドに迷いこむ。そこは、自分の代わりに女の子サキが生まれた世界で、両親も仲が良く、兄も生きていて、恋人も元気にしているという。

この小説をミステリーとして見ると、その女の子のサキが探偵役となって、サキが生まれた世界とリョウが生まれた世界の違いを一つ一つ調べて、その違いがどういう理由で生まれたのかを推理していくという話になる。しかし、その違いというのが、調べれば調べるほど、サキ側の世界は素晴らしく、リョウ側の世界は悲惨だということが分かってくる。その理由の元を辿れば、言うまでもなく、リョウが生まれた代わりにサキが生まれたからだ。リョウは家庭環境の悪さから無気力、無感動な人間になってしまったのだけど、サキはリョウとp違って、明るく聡明で面倒見がよい。環境の問題でリョウにはどうすることもできなかったと思っていたことが、次々とリョウでも変えることができたと判明していく。主人公に感情移入していると読めば読むほどヘコむ小説。

最後にも救いがあるわけではない。結局、全部自分のせいだ、ということが検証されたあとで、リョウは自分の世界に戻ってくる。もちろん、時間が戻ったりしたわけではない。

と、ここからがよく分からないんだよね。どうやらリョウにこんな地獄巡りをさせたのは、死んだ恋人のノゾミらしいのだが、その理由が「ノゾミが望んでも得られなかったものをリョウが拒んでいるから」らしい。しかし、それが何なのか分からないんだよね。いくつか候補を考えてはみたものの、どれもしっくりこない。それと、一番最後に母親からメールが来るのだが、それをリョウがポジティブに解釈したのか、ネガティブに解釈したのかも分からない。Webで検索してもあまりはっきりしたことを書いてあるところがないし、サイトによっては「ラストは解釈が分かれる」と書いてあるところもある。

なんか、読み間違えているか、読み足りないところがあるような気がして、読み終わってからもやもや感が消えない。読んで面白かったと言えば、面白かったんだけど、オチが分からないので、どう評価していいのやら分からないという感じ。おれと同じ目に会いたくない人には正直おすすめしない。

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